「今日、素振りした?」
「あとでやる」
その“あとで”が、夕飯を食べても、お風呂に入っても、寝る時間になっても来ない。
玄関には、朝から同じ角度で立っているバット。グローブも昨日のまま。親の方だけが落ち着かなくなって、ついインスタを開くと、よその子が暗くなるまでティーバッティングをしている。
……はい、比較の材料がそろいました(笑)。
うちの子、少年野球をやっているのに全然自主練しないんです。やる気がないんでしょうか?
パパコーチそう見えますよね。でも「やる気がない」は、理由ではなく大人が貼ったラベルかもしれません。
少年野球で子どもにやる気がないように見えると、親は焦ります。せっかく送迎して、道具も買って、当番もしている。だから「少しくらい自分から練習してよ」と思うのは、かなり普通です。
ただ、ここで「練習しなさい」を強くすると、動き出す子もいますが、もっと止まる子もいる。今回は、パパコーチとして見てきた現場も思い出しながら、自主練しない子の中で何が起きているのかを7つに分けて考えます。
少年野球で子どもにやる気がない?まず7つの理由を分けてみる

1.単純に疲れている。小学生の一週間、わりと忙しい
学校へ行って、宿題をして、チーム練習では大人より走る。低学年なら、帰宅した時点で電池が赤く点滅している日もあります。
そこへ「まだ10分しか振ってないぞ」は、スマホの充電1%に動画を再生させるようなもの。やる気以前に、今日は閉店です。
2.失敗するところを、もう見られたくない
練習したがらない子が、野球を嫌いとは限りません。空振りするたびに直され、捕れないたびにため息をつかれると、「練習=できない自分を確認する時間」になります。
うまくなりたい。でも失敗は見られたくない。この二つは、普通に同居します。
3.やっても上達している感じがしない
毎日100回振っているのに、試合では打てない。ノックを受けても、また後ろへそらす。子どもは努力の尊さより先に、「これ、意味ある?」を感じます。
ここで回数だけ増やすと、練習したふりが上手になります。素振りの音だけ聞こえる。でも見に行くと、半分は休憩。いや、休憩の合間に振っている(笑)。
4.何を練習すれば試合に近づくのか分からない
「自主練しておけ」は、子どもにとって意外と難しい指示です。バットを振るのか、ゴロを捕るのか、走るのか。何をどれだけすればいいか分からず、始める前に面倒になる。
大人でも「自由に自己研鑽してください」と言われたら、まずコーヒーを入れますよね。子どもも似たようなものです。
5.コーチや仲間との関係で、グラウンドが重くなっている
怒られるのが怖い。ミスをからかわれる。練習へ行っても自分だけ声をかけてもらえない。こうなると、自主練の問題に見えて、実はチームへ向かう気持ちの問題です。
以前書いた少年野球のコーチが怖いときの記事にもつながります。家では元気なのに、野球の前だけ腹痛や強い不安が続くなら、「根性がない」で片づけない方がいい。
6.親の期待が、応援より監視に見えている
親は応援しているつもりです。僕もそうでした。でも、車の中で反省会、家に着いたら素振り確認、動画を見ればフォームチェック。子どもからすると、監督が家までついてきたようなものです。
「あなたのため」が増えすぎると、野球が子どものものではなくなります。親が熱心すぎるときほど、子どものやる気は静かに隠れることがあります。

試合の帰り道に一度話して、夕飯でも続きを話し、風呂上がりに動画を見せる。親としては全部つながった一回の助言でも、子どもからすれば三部作です。しかも最終章がなかなか終わらない。
7.野球より、今やりたいことがある
友達と遊びたい。ゲームもしたい。絵を描きたい。別のスポーツも気になる。これは「野球に向いてない小学生」の証明ではありません。
親は年間で考えますが、子どもは今日で生きています。今日、野球以外が勝つ日もあります。毎日野球が1位でなければ許さないとなると、野球の方が嫌われます。
「自主練しない」と「練習したがらない」は、似ているようで違う
少年野球で自主練しないだけなら、チーム練習には楽しそうに通い、試合の日は自分で起きる子もいます。この場合は、野球が嫌なのではなく、一人で繰り返す練習が好きではないのかもしれません。
一方で、少年野球の練習そのものをしたがらない、前日の夜から表情が暗い、ユニフォームへ着替えると腹痛を訴える。ここまで来ると「家で振らない」の話ではありません。指導者、仲間、役割、痛み、疲労など、グラウンド側を見た方がいい。
パパコーチ“家で練習しない子”なのか、“野球へ行くのがつらい子”なのか。ここを間違えると、声かけも逆になります。
自主練しない子に、最初から「練習しなさい」は効きにくい

僕がまず変えたいのは、練習量ではなく最初の一言です。
×「今日も練習しないの?」
○「今日は何がいちばん疲れた?」
×「やる気あるの?」
○「打つのと捕るの、今ならどっちがまし?」
×「あの子は毎日やってるぞ」
○「昨日より一個だけ楽にするなら何にする?」
ポイントは、立派な答えを引き出すことではありません。「分からない」でもいい。黙っていてもいい。先に理由へ近づいて、練習の話はそのあとです。
少年野球での親の声かけは、正しい言葉を当てるクイズではありません。「今日は何が嫌だった?」と聞いて、返事が「別に」なら、その日は別にで終わっていい。聞いた直後に結論を迫らないことも、話を聞くうちに入ります。
少年野球でやる気を出す方法は、始めやすくすること
5分だけ、内容は子どもが選ぶ
「毎日100回」ではなく、「5分だけ一緒にやる?」くらいで十分です。ティーを5球、壁当て10球、フォームを動画で1本だけ。始めたあとに続けるかどうかも、子どもが決める。

始めたら欲が出て、もう少しやる日もあります。5分で本当に終わる日もあります。そこで「もう終わり?」と言わない。約束を守ったのは、むしろ親の方です。
結果より「自分で決めた」を残す
三振したか、エラーしたかだけを追うと、練習は罰になります。「今日は自分からグローブを出した」「5球で終わると決めて5球やった」。小さくても、自分で動いた事実を拾います。
やる気は、親が注入するものではありません。子どもが「自分で始められた」と思える隙間を、大人がつぶさないこと。たぶん、こっちの方が難しいんですけどね(笑)。
「休みたい」「怖い」「辞めたい」を同じにしない

一日休めば戻る疲れと、失敗が怖くて動けない状態と、野球そのものを辞めたい気持ちは別です。ここを一緒にすると、親子の話がずれます。
もし「もう辞めたい」という言葉が出ているなら、この記事で無理にやる気を戻そうとせず、子どもが少年野球を辞めたいと言ったときの記事へ進んでください。試合に出られないことが中心なら、試合に出られない子を見守る親の記事を先に整理した方が話しやすいです。
うちの子は、野球に向いていないのか

自主練しない。上達しない。試合でも積極性がない。ここまで並ぶと、親の頭には「向いてない」が出てきます。
でも、少年野球への向き不向きを、家でバットを振る回数だけで決めるのは早いです。仲間といるときは楽しそうなのか。ベンチから声を出しているか。失敗しても翌週またグラウンドへ来るか。野球を続ける力は、目立つ技術だけではありません。
少年野球で上達しない時期はあります。体が成長して感覚がずれる子、説明を理解しても動きへ変わるまで時間がかかる子もいる。そこで「野球に向いてない小学生」と決めると、本当に見たかった半年後を親が先に閉じてしまいます。
もちろん、続けることだけが正解ではありません。ただ、「今は打てない」と「向いていない」は別の話です。今日の結果だけで進路判定までしなくていい。少年野球です。まだドラフト会議ではありません(笑)。
じゃあ、親は何もしない方がいいんですか?
パパコーチ放っておくのではなく、観察するんです。何をしないかより、どんな時に少し動くかを見る。
親が見たいのは、今日の素振り回数。子どもに必要なのは、明日も野球を嫌いにならずにいられる余白。似ているようで、少し違います。
まとめ|やる気がないように見えたら、練習より先に理由を探す
バットが玄関から動かない日を見ると、親は焦ります。送迎も当番もお金も時間も、全部が頭をよぎるからです。
でも、その焦りをそのまま「練習しなさい」にすると、子どもは野球より先に親の機嫌を見るようになります。
疲れているのか。怖いのか。何をすればいいか分からないのか。それとも今は、別のことをしたいだけなのか。
やる気を出させる前に、やる気が隠れた場所を探す。
今日の自主練がゼロでも、親子の会話までゼロにしなければ、まだ次があります。
