少年野球のコーチが怖いと子どもが言った|厳しい指導と怒鳴るだけの違い

「今日、野球行きたくない」

朝、ユニフォームには着替えている。スパイクも自分でバッグに入れた。でも玄関で止まったまま動かない。

「どうした?」と聞いても、最初は「別に」。少し待って、やっと出てきたのが、「コーチが怖い」でした。

こういうとき、親の頭にはいろんな声が同時に出てきます。「厳しくしてくれているだけでは?」「うちの子が弱いのか?」「でも、毎週こんな顔をするのはおかしくない?」。脳内保護者会、急きょ開会です。

初心者ママ

すぐチームへ言った方がいいですか? 過保護だと思われませんか?

パパコーチ

まず、今日結論を出そうとしなくて大丈夫です。子どもの「怖い」の中身を分けて聞きます。

この「コーチが怖い」は、想像で作った話ではありません。まず、私が実際に見た出来事から書きます。

目次

私の経験|コーチを怖がり、学校まで休むことになった子

これは私が実際に見た話です。ただし、子どもやチームが特定されないよう、時期や細部はぼかします。少しつながりが不自然に見えても、そこは子どもを守るための編集だと思ってください。

その人は、保護者としてグラウンドにいる姿を私はほとんど見たことがありませんでした。ところがある日、「新しいコーチが一人入ります」と聞き、突然現れた。選手の保護者だというので、最初は「そうなんだ」くらいでした。

ただ、少し話すと独特でした。声が大きい。距離の詰め方が急。本人は場を盛り上げているつもりでも、周りの表情をほとんど見ていない。子どもの練習なのに、大人たちが楽しければ成立しているように見える瞬間もありました。

そして、失敗した子には声を荒らげる。「何回言わせるんだ」「ちゃんとやれ」。恐怖で動かす、昔ながらのやり方です。正直、最初からかなり引っかかりました。声量は指導力ではないんですけどね。マイクを持ったら全員名監督、とはなりません(笑)。

怖いコーチがチームへ入り子どもが来られなくなるまでの実例をまとめた図解
実話をもとにしていますが、子どもとチームを守るため細部を変更しています。

さらに気になったのがSNSでした。本人は「SNSを見て本気で勉強している」と話す。でも本は読まない。根拠を調べない。経験のある指導者へ聞かない。投稿を集めることと、学ぶことが同じになっていました。

SNSだけを見て勉強したつもりになる指導者の危険性

SNSそのものが悪いわけではありません。私も使いますし、入口として便利です。ただ、短い投稿には前提も例外も載り切らない。都合のよい言葉だけ拾えば、自己流を補強する道具にもなります。

決定的だったのは、自分の子を「一番だ」と持ち上げる一方、失敗した別の子を笑いの材料のように扱い、自分の子が活躍した物語の引き立て役にしたことでした。子どもは大人が思うよりSNSを見ています。その投稿も子どもたちの目に入り、嫌になって練習へ来られなくなった子が出ました。やがて学校まで休むようになった。

野球の指導で、子どもの日常まで崩れる。これは「厳しい指導」で済ませてよい話ではありません。

子どもをSNSの投稿素材として扱う少年野球コーチへの注意

もちろん私は、本人の心の中まで断定できません。悪気がなかった可能性もある。でも、指導者は「悪気がない」で結果を消せない立場です。子どもの失敗、名前、写真、試合結果を自分の実績づくりに使う前に、本人と保護者の同意、チームの方針、子どもへの影響を考える必要があります。

口だけでなく子どもと同じ目線で動くコーチの大切さ
言葉より行動を見ている子どもと一緒に動くパパコーチ

この話と合わせて見てほしいInstagram投稿

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https://www.instagram.com/p/DaRKTEzBmPY/

少年野球のコーチが怖い|最初に「そんなことで?」と言わない

親から見れば、小さなことに見える場合があります。声が大きかった。みんなの前で注意された。ミスを何度も直された。でも子ども側では、「失敗したらまた怒鳴られる」「自分だけ嫌われている」「次は何を言われるか分からない」が全部ひとつになっていることがあります。

そこで「コーチはお前のために言ってるんだよ」と先に正解を置くと、話は終わります。子どもが納得したのではなく、親には言っても仕方ないと学んだだけかもしれません。

最初に聞きたいこと
  • いつ、どこで怖かった?
  • 何を言われた、何をされた?
  • 自分だけ? ほかの子にも同じ?
  • 練習へ行きたくないほど?
  • 眠れない、腹痛など体にも出ている?

誘導尋問にはしません。「怒鳴られたんでしょ?」ではなく、「何があった?」。子どもの言葉を、そのまま一度受け取ります。

厳しい指導と怒鳴るだけの違いは、声量ではない

厳しいけれど届く指導と怒鳴るだけの指導の違い

グラウンドでは安全のため、瞬間的に大きな声を出す場面があります。「止まれ!」「ボールから目を離すな!」。これまで全部なくしたら、今度は別の意味で危ない。

ただし、声が大きいことと、人格まで小さく扱うことは別です。「今の送球は足が止まっていた。次は一歩入ろう」なら、子どもは次に何をするか分かる。「お前は何回言ったら分かるんだ」「だからお前はダメなんだ」は、直す場所がありません。残るのは恥ずかしさと、次も失敗する恐怖だけです。

たぶん線引きはここです。指導のあと、子どもに次の一歩が残ったか。それとも、コーチの機嫌だけが残ったか。

怖いコーチの陰で起きやすい「ダディボール」

親コーチによる不公平な起用が子どもやチームへ与える影響

怒声だけを見ていると、もうひとつの問題を見落とします。親コーチが自分の子を優先する、いわゆる「ダディボール」です。これは正式な野球用語ではありません。ただ、起用や評価の基準が見えず、「結局、あの家の子だから」で説明できてしまうチームには、たしかに似た空気があります。

ダディボールが疑われるチームのサイン

我が子のミスには「次いこう」。別の子には「何回言わせるんだ」。同じ失敗なのに、言葉も出場機会も違う。子どもは、大人が思うより早く気づきます。問題は、親コーチが我が子を好きなことではありません。好き嫌いとチームの判断が混ざったまま、説明されないことです。

親コーチ個人だけでなく評価基準や複数評価などチームの仕組みで考える図解

だから解決も「あの親コーチを追い出せ」で終わらせません。起用基準を言葉にする。複数の指導者で見る。家庭では親子へ戻る。相談先を決める。人の善意だけに任せず、仕組みで偏りを小さくする方が長く続きます。

健全な選手起用と親コーチの心構え

研究が問題にするのは「大声」そのものではない

怒声そのものではなく子どもを傷つける指導を考える導入図

ここは慎重に書きます。「怒声を使うと必ず競技力が落ちる」と、一本の研究ですべてを断定できるほど単純ではありません。競技、年齢、言葉、頻度、関係性が違うからです。

一方、若年選手への暴言や身体的虐待、支配的な指導、過度なプレッシャーと、不安、自己評価、燃え尽き、競技離脱などの関係は国内外で検討されています。日本の若年スポーツ指導者を対象にした研究では、指導者自身が過去に暴言・暴力を受けた経験や、それらを容認する意識との関連も報告されました。「自分もそう育ったから」を繰り返すだけでは、連鎖は止まりません。

研究で問題視される威圧や人格否定と子どもへの影響

ただし、研究はグラウンドで目の前の一場面の判定表ではありません。怒鳴らないコーチが放置してよいわけでもない。ふざけて危険な子を止めず、真面目な子だけが我慢するなら、それも健全とは言えません。

怒声を避けるだけでなく現場で行動を修正する必要を示す図解

海外風にすれば正解、でもない。でも言い換えは使える

人格を否定せず行動を伝えて切り替える指導

「海外では怒鳴らない」と一括りにするのも雑です。海外にも厳しいコーチはいるし、不適切指導もあります。ただ、行動を具体的に伝え、短く区切り、次のプレーへ意識を向ける考え方は参考になります。

少年野球で怒鳴る代わりに次の行動を伝える声かけ例

「何やってるんだ」ではなく「次はグラブを前で待とう」。「ちゃんとやれ」ではなく「次の一球だけ集中しよう」。「何回言わせる」ではなく「今の一つだけ直そう」。甘やかしではありません。何を変えるかが分かるぶん、むしろ逃げにくい指導です。

怒られた記憶ではなく次の行動が残る指導

子どもの記憶に残したいのは、コーチの怒った顔ではなく、次にどう動けばよいかです。

ふざける子と黙り込む子がいる日本の少年野球の練習場面

もちろん日本の現場では、ふざける子、笑ってごまかす子、黙り込む子が同じグラウンドにいます。全員へ同じ言い方をしても届きません。怒鳴るか放置するかの二択ではなく、止める、離して話す、短く伝える、役割を変える。大人の引き出しは、二つより多いはずです。

人格を否定せず行動は妥協せずチームを守る指導

「昔は普通だった」は、いま目の前の子の答えにならない

私たち親世代には、怒鳴られて、走らされて、水も飲まずにやった人がいます。それで強くなった人もいるでしょう。だから話が少し難しい。

でも、生き残った人の成功談だけを集めても、途中で野球を嫌いになった子の声は聞こえません。「俺たちも耐えた」は経験談ではありますが、免許証ではないんですよね。

スポーツ庁や日本スポーツ協会も、暴力・暴言・ハラスメントなどの不適切な指導をなくし、安全・安心な環境を確保する取り組みを進めています。厳しい練習を全部否定する話ではありません。子どもの人格を削らないと成立しない指導を、伝統と呼ばないという話です。

親が見落としたくない「怖い」が続いているサイン

  • 練習日前になると腹痛や頭痛を訴える
  • 車の中で急に黙る、帰宅後に荒れる
  • ミスより「怒られること」を気にする
  • 好きだった自主練をしなくなる
  • チームやコーチの話を極端に避ける
  • 「自分が下手だから全部悪い」と言う

ひとつあったら即退団、ではありません。学校や家庭の疲れが重なっていることもある。ただ、複数が続いているのに「根性をつける機会」で済ませるのも違います。

コーチへ伝える前に、事実と感情を分けておく

腹が立った勢いでグループLINEへ書くと、話が「子どもが困っている」から「どちらの親が正しいか」へ移動します。少年野球、人間関係の変化球だけはよく曲がります。

まず、日時、場所、実際の言葉、周囲にいた人、子どもの変化をメモします。相談するときは「怒鳴るのをやめてください」だけではなく、「土曜日の守備練習で、本人が〇〇と言われたと話しています。それ以降、練習前に腹痛が続いています」と伝えた方が、話を事実へ戻せます。

当人へ直接言いにくい場合は、代表、監督、チーム責任者、所属団体の窓口へ。公認スポーツ指導者やスポーツ少年団登録者による暴力・暴言等については、日本スポーツ協会にも相談窓口があります。緊急性や安全上の問題がある場合は、チーム内だけで解決しようと抱え込まないでください。

資格があっても、子どもが安心できるとは限らない

資格は大切です。安全、成長期、指導法を学び直す入口になる。ただ、証明書がその人の毎週の言葉まで保証するわけではありません。

少年野球のコーチ・審判に資格は必要?でも書きましたが、取った日より、取ったあとにどう立つか。親が見るのも、肩書きではなく、失敗した子への態度です。

それでも変わらないなら、辞めることは逃げではない

話し合って改善するチームもあります。コーチ本人が、自分の声が子どもへどう届いていたか気づくこともある。だから最初から全部を敵にしなくていい。

一方で、相談した子を練習から外す、親を面倒扱いする、暴言が繰り返される。そんな状態なら、環境を変える選択も必要です。チームを辞めることと、野球を辞めることは同じではありません。

パパコーチ

守りたいのはチームでの立場ではなく、子どもが野球を好きでいられる余白です。

まとめ|子どもの「怖い」は、判決ではなく大事な報告

「コーチが怖い」と言われても、親はその場ですべてを決めなくていい。ただ、「そんなことで」と閉じないこと。何があったかを聞き、続いている変化を見て、必要なら事実を持って相談する。

厳しい指導か、怒鳴るだけか。外から一瞬見ただけでは分からないこともあります。でも、練習後の子どもの顔には、案外はっきり出ています。

うまくなったかだけでなく、また来週も野球をしたい顔をしているか。親が見るべきスコアは、そこにもあるのだと思います。

参考情報

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