試合当日、「今日、誰かキャッチャーできる?」とベンチを見回す。目が合った子から順番に下を向く——これは作戦会議ではありません。ほぼ祈りです。
2027年から、全日本軟式野球連盟の学童部では同じ試合で投手と捕手を兼任できなくなります。これまで「エースが投げて、降板後はキャッチャー」という形で回していたチームほど、第2捕手の育成は待ったなしです。
ただし、第2捕手は「正捕手が休んだ日に、とりあえずマスクを被る子」ではありません。捕る、止める、拾う、投げる、伝える。この順番で経験を積み、短いイニングから試合へ入れる選手を育てます。
この記事で分かること:第2捕手に向く子の見つけ方、練習日に入れやすい20分メニュー、30日育成プラン、試合デビューまでの段階が分かります。
2027年の兼任禁止で、なぜ第2捕手が必要なのか
全日本軟式野球連盟の公式資料では、2027年から学童カテゴリーで、同一試合における投手と捕手の兼任を禁止すると案内しています。投手から捕手、捕手から投手のどちらも不可です。

投手が遊撃手へ回り、あとで再び投手へ戻ることは可能です。捕手も同様に、ほかの守備位置を挟んで再び捕手へ戻れます。禁止されるのは、同一試合で投手と捕手の両方を務めることです。大会やリーグの特別規則がある場合は、そちらも確認してください。
ルール変更の全体像や2026年の投球数制限は、別記事「学童野球のルール変更【2026・2027年】」で詳しく整理しています。この記事ではルール説明を繰り返さず、じゃあ、どう育てるのかへ進みます。
第2捕手って、正捕手が休んだときだけ防具を着る子ですか?
パパコーチそれでは試合で動けません。ブルペン、短いイニング、練習試合まで経験させて、いつでも入れる捕手に育てます。
第2捕手は「控え」ではなく、もう一人の試合準備者
理想は「正捕手1人+第2捕手1人+緊急時に防具を着られる候補1人」。人数の少ないチームで全員を完成形へ持っていく必要はありません。ただ、正捕手しか投手の球を受けたことがない状態は、2027年以降かなり苦しくなります。
| 役割 | 普段から経験させること | 試合での目安 |
|---|---|---|
| 正捕手 | 主力投手の球、守備連携、試合全体 | 先発・長いイニング |
| 第2捕手 | 複数投手の球、短い実戦、交代準備 | 練習試合や短いイニング |
| 緊急候補 | 防具の着脱、構え、近距離の受球 | 欠員時に段階的に対応 |
第2捕手は、ベンチでプロテクターを抱える係ではありません。試合前から投手の球を受け、ワンバウンドを止め、守備へ声をかける。つまり「次の一球へチームを戻せる人」です。

試合当日も、第2捕手をベンチの置物にしない
第2捕手は試合前に防具を合わせ、交代する可能性のある投手の球を受けます。試合中は投手の状態と守備状況を見て、交代が決まってから慌ててレガースの左右を確認しない。試合後は良かった一球と困った場面を一つずつ振り返ります。

少年野球のキャッチャー育成は5段階で考える
捕手練習というと、すぐ二塁送球のタイムを測りたくなります。でも、ボールをきちんと捕れていないのにストップウォッチだけ元気でも困ります(笑)。まずはプレーを5つへ分けます。

1.捕る|近距離・柔らかい球から始める
最初は近距離から、柔らかいボールを素手またはミットで捕ります。狙いは「速い球に耐えること」ではなく、ボールの後ろへ手を置き、体の前で静かに受ける感覚です。
- 5〜7メートル程度の近距離から山なり
- 胸の前、右、左へゆっくり投げ分ける
- 捕ったミットを大きく流さない
- 怖さがある子はテニスボールや柔らかい練習球を使う
2.止める|最初はブロック姿勢を作ってから
最初から構えた状態で激しいワンバウンドを投げる必要はありません。両膝を着いたブロック姿勢を先に作り、柔らかい球を胸元へ転がす。正面に落ちる感覚が分かってから、通常の構えから動きます。

3.拾う|止めた後の一歩を練習する
止めて終わりではなく、ボールの位置を確認し、立ち上がって拾うまでを一続きにします。体の横へ転がったボールに対し、慌てて素手だけを伸ばすと後逸しやすい。まず足で近づき、体の正面へ入ります。
4.投げる|握り替え、足運び、正確さの順
Little League公式の捕手ドリルでも、送球はまず交換動作と足運びを分けて練習する流れが紹介されています。最初から全力で二塁へ投げず、「捕る→向きを変える→ボールを取り出す」だけを反復。その後、短い距離へ正確に投げます。
5.伝える|捕手の仕事は大声大会ではない
「ボール来るよ!」だけでなく、「一塁!」「前!」「落ち着いて!」と、今必要な情報を短く伝えます。Little League公式も、捕手に必要な要素としてボールを止めること、コミュニケーション、投手を知ることを挙げています。
毎回20分で回せる捕手練習メニュー
第2捕手育成は、捕手だけで1時間を独占しなくても進められます。全体練習の中へ20分を差し込み、正捕手と第2捕手を交代で回します。

2人を同時に育てるなら3ステーションで回す
正捕手と第2捕手を一列に並べ、片方がずっと待つ練習はもったいない。受球、ブロック、握り替え・声かけの3か所を作り、6分ごとに交代します。コーチが一人でも、柔らかい球の担当を選手同士で行えば回せます。

| 時間 | メニュー | 見るポイント |
|---|---|---|
| 3分 | 防具・構え | マスクの緩み、カップ、レガース、無理のない姿勢 |
| 5分 | 近距離の受球 | ボールの後ろへミットを置けるか |
| 5分 | ワンバウンド | 正面へ落とし、すぐ位置を確認できるか |
| 4分 | 握り替え・足運び | 速さより動作の順番と正確さ |
| 3分 | 声かけ・状況確認 | 短く、相手に届く内容になっているか |
負荷を重ねない:その日に投手練習をした子へ、さらに捕手の全力送球を大量に重ねるのは避けます。年齢、体調、当日の投球量に合わせて球数と強度を下げ、肩や肘に痛みがあれば中止してください。
パパコーチ一度に完成させようとすると、捕手もコーチも疲れます。20分を毎回続けるほうが、試合で使える動きになります。
第2捕手を30日で試合へ近づける育成プラン
ここでいう30日は「30日で名捕手にする」という通販番組ではありません。短いイニングを落ち着いて任せるための入口です。週2回ほど練習できる想定で、できない動作があれば前週へ戻します。

1週目|防具と受球に慣れる
- 防具を自分で着け、外せるようにする
- 近距離から柔らかい球を受ける
- 投手へ返球するまでを丁寧に行う
2週目|止めて、拾って、次を見る
- 完成したブロック姿勢から始める
- 正面、少し右、少し左を止める
- ボールを確認し、立って拾う
3週目|握り替えと短い送球
- 投げずに「捕る→向く→握る」を繰り返す
- 短い距離へワンバウンドでも正確に投げる
- 投手・一塁手・二塁手へ声を出す
4週目|ブルペンから練習試合へ
- 複数の投手の球を少しずつ受ける
- 走者なしの場面から実戦形式へ入る
- 練習試合で1イニング、問題なければ2イニングへ
合格点は盗塁を刺すことではありません。大きな後逸を減らし、ボールの位置を見失わず、守備へ声をかけ、次の一球を始められること。ここができれば、第2捕手として試合経験を積めます。
第2捕手に向く子の選び方|肩の強さだけで決めない

肩が強い子は魅力です。ただし、捕手は一試合で何度も受け、止め、返し、声を出します。遠投だけで選ぶと、試合になった瞬間に「思っていた仕事と違う」が起きます。
- 本人がやってみたい:興味がある子は防具や動作を覚えやすい
- 怖がりすぎない:怖さゼロではなく、段階練習で慣れられる
- しゃがむ姿勢が安定:無理な痛みがなく、数球ごとに立って休める
- 伝えられる:大声より、必要な言葉を相手へ届けられる
- 切り替えられる:後逸やミスのあと、次の一球へ戻れる
- 防具が合う:安全に動けるサイズが用意できる
「お前、体が大きいから捕手な」は雑すぎます。体格は助けになりますが、本人の気持ちと防具の適合を置き去りにすると、捕手が嫌いになる最短ルートです。
キャッチャー育成でよくある6つの失敗
- 正捕手だけが全部の球を受ける:第2捕手が試合前の投手を知らないままになる
- 最初から硬球並みの勢いで投げる:恐怖が先に育つ。柔らかい球と近距離から始める
- 二塁送球のタイムばかり測る:握り替えと足運びが崩れ、暴投が増える
- 防具のサイズを確認しない:マスクのぐらつき、レガースのズレは安全と動作の両方を損なう
- 試合当日だけ捕手にする:投手との距離感、返球、声かけが準備できない
- 一度の失敗で外す:経験を積ませるはずが、失敗禁止大会になってしまう
一番もったいないのは、「正捕手が上手だから任せておこう」と先延ばしにすることです。正捕手が元気な日こそ、第2捕手を横で学ばせられます。欠席してから育成を始めても、防具は先生になってくれません。
試合へ出す前のチェックリスト
- 防具を正しく着けられる
- 通常の投球を大きく怖がらず受けられる
- ワンバウンドを体の前へ落とせる
- 止めたボールの位置を確認して拾える
- 投手へ落ち着いて返球できる
- アウト数と走者を一緒に確認できる
- 「一塁」「前」「落ち着いて」など短い声を出せる
- 肩、肘、膝、腰に痛みがない
最初の実戦は簡単な場面から:練習試合、走者なし、短いイニングから始めます。いきなり最終回・一打同点・俊足走者ありへ投入するのは、育成ではなくイベントです。
少年野球の第2捕手育成でよくある質問
第2捕手は何人必要ですか?
最低でも正捕手とは別に1人。可能なら緊急候補を含め3人が防具と基本動作を経験していると安心です。人数の少ないチームは、内野手や外野手との兼任で構いません。
2027年以降、投手を緊急捕手にできますか?
全日本軟式野球連盟の学童部では、同じ試合で投手と捕手の両方を務めることはできません。投手経験者でも、その試合で投手として出場していなければ捕手候補にはできます。最終的には大会要項と特別規則を確認してください。
低学年でもキャッチャー練習はできますか?
できます。柔らかい球、近い距離、短い時間から始め、受球と声かけを中心にします。重い防具で長時間しゃがませたり、全力送球を繰り返したりする必要はありません。
ボールを怖がる子は捕手に向きませんか?
怖さがあるのは普通です。柔らかい球で「防具に当たっても大丈夫」「正面に落とせた」を経験させます。ただし、強い恐怖が続く子へ無理に担当させる必要はありません。本人の意思を優先します。
捕手防具は個人で買うべきですか?
最初はチームの防具で十分です。複数サイズがあるなら体に合うものを使い、マスク、プロテクター、レガース、スロートガード、ファウルカップなど必要な装備をチームで確認します。継続して担当し、サイズや衛生面で必要になってから個人購入を検討しましょう。
まとめ|2027年までに「もう一人」を試合へ出そう
2027年の兼任禁止へ備える一番の方法は、名簿に「第2捕手」と書くことではありません。今の練習で5分受ける。次はワンバウンドを止める。ブルペンへ入る。そして練習試合で1イニングを任せる。その小さな実戦を積むことです。
- 投手とは別に捕手を準備する
- 捕る→止める→拾う→投げる→伝えるの順で育てる
- 練習日に20分を差し込む
- 第2捕手も複数投手の球を受ける
- 速さより、次の一球へ進める落ち着きを見る
パパコーチ第2捕手は、正捕手の代用品ではありません。チームの選択肢を一つ増やし、投手と正捕手を守る大事な選手です。
試合当日に「誰かできる?」と聞かなくていいチームへ。今日の練習から、もう一人にミットを渡してみましょう。


