「今日は30度くらいか。昨日よりマシだな」
そう思ってグラウンドへ出たら、立っているだけで汗が止まらない。
ベンチの下は蒸し風呂。土からは熱が返ってくる。
それでも子どもが走っていると、「まだ大丈夫」と思ってしまいます。
元気に見える。これが本当に怖いんです。
でも、その“大丈夫”を子ども本人に任せるのが、夏の少年野球では一番怖いんですよね。
気温を見て、水筒を多めに持たせれば十分じゃないんですか?
パパコーチ水筒は大事。でも「持ってきたから安心」ではないんです。暑さを測って、練習の方も変える必要があります。
少年野球の熱中症対策で見るべきなのは、気温に加えて湿度、日差し、地面からの照り返し、風、練習内容、そして子どもの様子です。水筒を増やすだけでは解決しないところを、グラウンドでの判断につなげていきます。

今、具合の悪い子がいる場合は、記事を読み進めるより対応を優先してください。運動を止めて冷却し、反応がおかしい・けいれんがある場合は119番。自力で飲めない場合も急いで医療機関につなぎ、重い症状や搬送に迷う場合は119番で相談します。無理に飲ませないでください。
少年野球の暑さ対策、気温だけ見ていませんか
同じ30度でも、風があり日陰のある日と、湿度が高く無風で照り返しの強い日は別物です。気温計が同じ数字でも、ユニフォームの中で子どもが受ける負担は変わります。

そこで使うのが暑さ指数、いわゆるWBGTです。環境省は、WBGTを気温・湿度・日射や輻射など周辺の熱環境を取り入れた指標として案内しています。名前はちょっと難しい。でも意味はシンプルで、「今日この場所で運動して大丈夫か」を考える材料です。

「暑い=気温」ではない。湿球温度を見る理由

湿度が高いと汗が蒸発しにくく、体から熱を逃がしにくくなります。だから「30度しかない」は安心材料になりません。数字の“しか”が、夏だけ急に信用できなくなるんです。


WBGT計は「持っている」より、どこで測るか
WBGT計をバッグに入れたまま。「一応あります」で終了。いや、それはお守りです(笑)。測るなら、子どもが実際に動く場所で、活動前だけでなく練習中も繰り返します。

① 家を出る前に予報を確認
② 到着後、グラウンドで測定
③ ベンチや活動場所の近くで継続確認
④ 数字だけでなく、子どもの顔・返事・動きも見る
日向の内野と、屋根のあるベンチ裏では値が違います。測定器を車内に置いたままでも意味がない。道具は優秀でも、置き場所まで考えるのは人です。
ベンチが涼しくても、ノックを受ける内野が同じとは限りません。活動場所の環境を代表する位置で測り、機器の説明書どおりに設置して、値が安定してから判断します。体に密着させたままの値や、移動直後の値を、そのまま練習可否の根拠にしないこと。図の携帯・柱への設置は使用場面のイメージで、測定方法は機器の説明書を優先します。
予報は出発前の計画に、実測値は現場での見直しに使います。
WBGT25・28・31で、暑い日の練習を変える
| 暑さ指数(WBGT) | 運動の目安 |
|---|---|
| 21未満 | ほぼ安全。ただし適宜水分補給 |
| 21以上25未満 | 注意。積極的に水分補給 |
| 25以上28未満 | 警戒。積極的に休憩 |
| 28以上31未満 | 厳重警戒。激しい運動は中止 |
| 31以上 | 運動は原則中止。特に子どもは中止すべき |
環境省が紹介する熱中症予防運動指針では、WBGT25以上は積極的に休憩、28以上31未満は激しい運動や持久走などを中止し、運動する場合も10〜20分おきに休憩、31以上は運動を原則中止とされています。特に子どもは中止すべきと明記されています。「31未満なら安全」「休憩を挟めば何でも続けてよい」という意味ではありません。体調、暑さへの慣れ、装備、運動の強さも見て、より早く止める判断が必要です。


ここで怖いのが、「あと30分だから」「せっかく相手チームが来たから」「大会前だから」です。全部、大人には分かる事情です。でも熱中症は、グラウンド予約表を読んでくれません。
パパコーチ中止は負けではありません。子どもを無事に帰すところまでが、その日の試合運営です。
子どもは元気そうでも、「大丈夫」をうのみにしない
子どもは体温調節能力が発達途中で、体格の影響から炎天下や照り返しの強い環境では深部体温が上がりやすいと、環境省のマニュアルでも説明されています。さらに試合へ夢中になると、水分補給も体調の申告も後回しになりがちです。


「大丈夫?」と聞けば、だいたい「大丈夫」と返ってきます。レギュラーを外れたくない。弱いと思われたくない。そもそも本人も変化に気づいていない。だから大人が、顔色、汗、動き、返事を見ます。汗が出ているから熱中症ではない、とも判断できません。変化を一つずつ見るのであって、チェック項目を全部満たすまで待つわけではありません。

少年野球の熱中症対策で、現場が決めておくこと
- 給水を子どもの申告制にしない
- 休憩時間と日陰の場所を先に決める
- 体調不良を言っても不利益にならない空気をつくる
- WBGTを誰が、どこで、何分おきに確認するか決める
- 中止・短縮・場所変更の決定者を明確にする
一番まずいのは、みんな危ないと思っているのに、誰が止めるか決まっていない状態です。「監督が言うと思った」「保護者が水を出すと思った」。熱中症対策まで伝統芸能の空気読みにはしない方がいい。
Instagramでは、WBGT計をどう使うかを画像でまとめています。保存だけして満足せず、チーム内で「誰が測るか」まで話しておくと、当日の動きが変わります。
暑さ対策グッズは補助役。「あるから続ける」は逆です
ミストファン、氷、冷却用品は休憩環境を整える補助になります。ただ、涼しく感じることと、安全に練習を続けられることは別です。ただし、グッズがあることで「これがあるから続けられる」と無理を正当化したら逆です。



商品画像の感想や性能表示は、それぞれの使用例です。機種・使用条件によって異なり、熱中症を防げる保証ではありません。購入する場合はメーカーの仕様と注意事項を確認してください。
ミストなどの効果は湿度や風通しにも左右されます。道具の有無を、練習を続ける許可証にはしないでください。
優先順位は、中止や短縮の判断、休憩、給水、日陰、観察。そのあとに便利な道具です。ミストファンは監督ではありません。WBGT31でも「いけるいける」とは言ってきませんから(笑)。
熱中症が疑われたら、根性を見る時間ではない
めまい、立ちくらみ、筋肉のけいれん、頭痛、吐き気、強いだるさ、返事がおかしい。変化があれば運動を止め、涼しい場所へ移し、衣服を緩めて体を冷やします。意識がはっきりして自分で飲めるなら、水分と塩分を補給します。
意識がおかしい、けいれんがある、自分で水を飲めない、強い脱力で動けない場合は、ためらわず119番です。反応がおかしい人へ無理に水を飲ませてはいけません。救急車を待つ間も冷却を続けます。皮膚を水でぬらして風を当てるなど、できる冷却を始め、119番の指示に従ってください。飲水と休憩で改善しない場合も、医療機関を受診します。
まとめ|少年野球の暑さ対策は、測って、見て、止める
夏のグラウンドで難しいのは、暑さを知ることではありません。みんな暑いのは分かっています。
難しいのは、練習を短くすること。中止を口にすること。「今日はここまで」と大人が決めることです。
根性より先に、決断が必要なんです。
WBGT計は、その判断を誰か一人の弱気にしないための材料になります。
勝つために練習しているのに、その練習で子どもが倒れたら、話が逆です。水筒を持たせて終わりではなく、測る、休ませる、よく見る。そして危険なら止める。
今日の練習を短くしても、また野球はできます。まずは、全員で無事に帰りましょう。
当番一人に、安全確認を背負わせない
給水の準備をする人と、練習を止める責任者は、同じとは限りません。「お茶当番が見てくれるだろう」で済ませず、監督・コーチ・保護者で役割を決めておきたいところです。コーチの資格と学び直しも、安全な現場をつくるための話につながります。
※2026年8月29日確認。一般的な予防情報であり、診断の代わりではありません。体調不良時は医療機関・救急の指示を優先してください。

