「昔、野球やってたんですよね? じゃあ、今度コーチお願いします」
少年野球で経験者に渡される仕事、だいたい説明が短いんですよね(笑)。グローブを持っている。キャッチボールができる。ユニフォームも似合う。はい、指導者のできあがり――とは、さすがにいきません。
私も息子たちの野球に関わり、パパコーチや塁審を続ける中で、仕事や家庭の合間に講習を受けました。そこで最初に感じたのは、昔の野球経験と、今の子どもを安全に教える知識は別物だということ。審判も同じです。ルールを知っているつもりでも、立つ位置、見る順番、コールの間には、ちゃんと理由がありました。
パパコーチ少年野球のコーチ・審判に資格は必要?
先に交通整理をします。日本野球機構ではなく、ここで扱うのは全日本軟式野球連盟(JSBB)に登録する学童チームの話です。
- 指導者:登録学童チームには、対象資格を持つ指導者を少なくとも1人置く仕組みがあります。
- 登録審判員:都道府県支部などが行う講習・技術指導を受け、地域の大会で活動します。
- 保護者の当番審判:登録審判員と同じとは限りません。大会要項や地域、チームによって条件が違います。
つまり、「ベースコーチも塁審も全員、全国共通の資格試験に合格しなければならない」は言いすぎ。一方で「昔やっていたから、何も学ばなくていい」も違う。その真ん中に、現場のリアルがあります。
公認学童コーチの勉強は、仕事が終わってから始まる

子どもを寝かせて、片づけをして、パソコンを開く。もう眠い。動画を再生した瞬間、コーヒーを入れ忘れたことに気づく。資格の勉強というと格好よく聞こえますが、実態はわりと地味です。
JSBBの公認学童コーチは、現在はeラーニングを中心に学べる仕組みがあります。基礎理論、投動作、安全や育成に関わる内容を学び、確認テストなどを経て申請します。資格の有効期間は4年で、対象者は更新研修も必要です。登録認定日や費用、申請方法には決まりがあるので、古いSNS画像だけで申し込まず、必ず公式ページを見てください。制度は、野球のルール以上に静かに変わります(笑)。
なお、登録学童チームに必要な対象資格は公認学童コーチだけではありません。JSPOのコーチ資格など、要件を満たす複数の資格があります。ただし、支部独自の取り扱いがある場合もあるため、最後は所属支部への確認が確実です。
資格を取って変わったのは、声の大きさではなく「待てる時間」
講習を受けたから、翌朝から名将になるわけではありません。子どもがエラーした瞬間に、頭上へ「正しい声かけ」が降ってくるわけでもない。
でも、すぐ怒鳴らずに一度見る。成長期の体へ大人の根性論を載せない。できなかった結果だけでなく、怖がっていたのか、理解できていなかったのかを考える。そういう一拍は増えました。
パパコーチたぶん資格の価値は、「私は正しい」と証明することではありません。自分の昔の常識は、今の子どもにも本当に合っているのかと考える入口です。
登録審判員は、いきなりグラウンドへ放り込まれるわけではない

JSBBでは、各都道府県支部が審判講習会や技術指導を行っています。登録後は所属する支部や地域の試合で活動するのが基本。ただし、講習の名称、登録条件、試験の有無、審判員証や修了証の扱いは同じではありません。

ですから、「審判員証がない人は塁審をしてはいけない」と一括りにもできません。チーム内の保護者審判と、連盟に登録して大会を担当する審判員は、似て見えて立場が違います。大会要項を確認し、分からなければ審判長や所属支部へ聞く。地味ですが、これが一番早いです。
審判講習で直されたのは「早く判定しなきゃ」という焦り

初めて塁審に立つと、沈黙が怖いんです。ランナーが滑る。送球が来る。ベンチも応援席もこちらを見る。「早く言わなきゃ」と思う。だから、見終わる前に口が動く。
ところが講習では、まず静止して見る。捕球、触塁、走者の到達を確認する。プレイが完全に終わってからコールする。たった一拍なのに、これが難しい。周りの「アウト!」に判定を引っぱられた日なんて、帰りの車で一人反省会です。審判あるあるですが、反省会の審判長も自分です(笑)。

2人制審判の動きは、丸暗記より確認する順番
二塁の近くへ動く塁審は、一塁走者の有無、二塁走者、アウトカウントで担当が変わります。表だけを見ると「こんなの試合中に思い出せるか」となります。はい、最初は私もなりました。


試合前に「一塁走者はいるか」「二塁走者はいるか」「アウトはいくつか」の順で確認しておくと、かなり迷いが減ります。細かな動きは大会方式や審判長の指示を優先してください。二塁の担当を場面ごとに整理した記事は、2人制審判で二塁はどちらが見る?塁審の早見表にまとめています。
資格は、偉くなるための名札ではない

資格を取ると、少し自信はつきます。講習を終えた証も、正直うれしい。でも、それを見せて誰かより上に立つためではありません。
試合の日に見えるのは、コールをする審判と、ベンチで指示を出すコーチです。その前には、休みの日に講習へ行った時間がある。仕事のあとに動画を見た夜がある。グラウンド整備や道具の準備をして、何も言わず帰る人もいる。
少年野球は、子どもだけでできません。でも、大人が主役になるためにあるわけでもない。この少し面倒な距離感を忘れないために、学ぶ時間があるのだと思います。
パパコーチまとめ|経験者だからこそ、一度学び直してみる
- 登録学童チームには、対象資格を持つ指導者を少なくとも1人置く仕組みがある
- 公認学童コーチ以外にも対象資格があり、支部独自の条件が加わる場合がある
- 登録審判員の講習・登録・証明書などは地域で異なる
- 保護者当番の塁審と登録審判員は、必ずしも同じ立場ではない
- 資格は肩書きではなく、安全と育成のために自己流を見直す入口
昔、野球をやっていた。その経験は大きな財産です。ただ、昔の自分の横に、今の子どもが立っています。体も環境も、求められる指導も変わりました。
「資格が必要だから仕方なく」ではなく、「もう少し安全に、もう少し落ち着いて見られるように」。それくらいの入口でいい。学んだあと、同じグラウンドが少し違って見えたら、それだけでも受けた意味はあります。
